過保護なドクターととろ甘同居


「わー、なになに、何いただいたの?」


先生が部屋からいなくなると、宮城さんは紙袋に興味津々な目を向ける。

一番近くに座る木之本さんが袋を引き寄せ、木之本さんの前に置いた。


「あっ、これあそこのケーキじゃない! しかもこんなにたくさん!」

「院長は、ケーキは食べなかったかしら?」


木之本さんは考えるようにして呟く。

そして、「じゃあ、ありがたくいただきましょう」と言った。


「三枝さんに院長院長言っちゃったけど、滝瀬さんとはどうなんだろうね、院長」

「え……?」


宮城さんの口から出てきた言葉に、つい反応してしまった。

おかずを掴んだ箸を口に運びながら、宮城さんは私を見る。


「あ、三枝さんは知らないわよね」と、何やら意味深な言い方をした。


「滝瀬さんね、うちで出産したのよ。今日、赤ん坊連れてたでしょ?」

「あ、はい」


私の返事を最後に、一瞬の沈黙が流れる。

二人の顔を交互に見ると、木之本さんの方が口を開いた。


「滝瀬さん……ちょっと色々あってね、大変だったのよ」

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