MAZE ~迷路~
『美波、美波。』
絢子の声に、美波はやっとの事で目を開けた。
灰色と苔色をしたおどろおどろしい周りの様子に、美波はカビの培養実験を思い出した。
『美波、ごめん。なかなか抜け出せなかったの。』
そういう絢子の姿は、まるで透き通っているように見えた。
『美波がいっぱい昔の事を思い出してくれたから、やっと美波に声が聞こえるようになったみたい。』
絢子に触れようと、美波はゆっくりと手を伸ばした。
『美波、美波が触れられるほど、もうそんなに体力ないんだ。』
絢子の言葉に、美波は手を引っ込めた。
「ティンク、どこに居るの?」
『・・・・・・病院。あれからずっと、・・・・・・に閉じ込められてるの。美波、・・・・・・を助けてくれる? 美波が、もっと近くに来てくれたら、・・・・・・・・・・と思う。』
段々に、絢子の声は途切れ途切れになっていった。
「ティンク、良く聞こえない。」
『・・・・・ない。戻ってきたんだ。また、・・・・・・・・・・・・な事をする・・・・・・だ。あいつら、けだ・・・・だよ。美波も・・・・つけて。もう、駄目・・・・・・。みな・・・・・・。』
絢子の声は途切れ、姿は掻き消えてしまった。
(・・・・・・・・私が力を送る事できないかしら・・・・・・・・)
美波は考えながら、自分が眠りから醒めるのを感じた。
(・・・・・・・・長い間離れてるから、波長が合わないんだ。だから、私が昔の事を思い出したりすることによって、波長が合うと、ティンクもコンタクトしやすくなるんだ・・・・・・・・)
美波は考えながら、ぱっちりと目を開けた。
「間違いない。ティンクは生きてる。栗栖さんが言ったとおり、病院に閉じ込められてるんだ。」
美波は呟くと、天井を見つめた。
(・・・・・・・・ティンク、待ってて。必ず助けに行くから・・・・・・・・)
美波は心の中で呟くと、再び目を閉じた。
☆☆☆
絢子の訪れが先触れとなったように、栗栖は翌日の晩、連絡をしてきた。
『栗栖です。今お話できますか?』
いつもながら、警戒した声に、美波は辺りの様子を窺がった。
「大丈夫です。」
美波が言うと、栗栖はすぐに話し始めた。
『やっと分かりました。心療内科のに新しく出来た入院棟、特別室が設けられているんで、特別病棟と呼ばれてるらしいんですが、そこの一室に移されたようです。いままで居所が分からなかったのは、霊安室の真裏にある遺体処理室の続き部屋らしきところに閉じ込められていたからのようです。』
栗栖の言葉に、美波は夢に見たおどろおどろしい気配を思い出した。
「遺体処理室・・・・・・。」
美波は呟きながら、背筋が寒くなるのを感じた。
『実は知り合いに、臓器の不法売買を追ってるジャーナリストがいましてね、そいつに近江病院が怪しいって吹き込んだんですよ。そうしたら、思ったとおり忍び込んでくれましてね。そいつ曰く、『ライブストックが、その奥の部屋に隠されている』って、そう言うんですよ。そうこうしてるうちに、絢子さんらしき患者が動かされたようだって連絡が入りました。』
栗栖の言葉に、美波は自分が忍び込むのが霊安室の隣ではなくて良かったと、すこし安堵した。
『ただ、病棟が病棟だけに、監視もたくさんいますし、何かあったときに逃げ道が確保できないので、それにいま頭を悩ませてます。』
「窓があれば、窓から飛び降ります。」
美波が言うと、電話の向こうの栗栖は絶句したようだった。
『美波さん、特別病棟は地上五階以上ですよ。落ちたらぺっちゃんことは言わなくても、死ぬほどの大怪我をします。死ぬ方が、確率高いかもしれません。』
栗栖は言うと、口を閉じた。
「そうですよね。ティンクが元気とは限らないし。」
美波は言うと、栗栖と同じように黙り込んだ。
『ただ、嫌な噂を耳にしたんです。連中の集まりが近々あるって。そうすると、絢子さんをもっと遠くに連れて行かれることも考えられます。いままで、ずっと近江病院に置いていた方が、おかしいくらいですから。』
「忍び込めると思いますか?」
美波は単刀直入に、問いかけた。
『情報を流してくれた看護士なんですが、疑われているようで。近々、退職すると言っていました。今度の土曜日が最後の夜勤で、その日になら助けてくれると言っています。』
栗栖の言葉からは、決断するのに時間が足りない、と言う思いがにじみ出ていた。
「やりましょう。」
美波はすぐに言った。
「中に入れば、少なくとも同じ敷地内とか、建物内に入ったら、ティンクの気配で場所は分かると思います。」
美波の言葉に、栗栖は悩んでいるようだった。
『絢子さんの状態がわからないので、美波さん一人で救出できるか分かりません。十年近くもベッドに縛られていたら、歩けない可能性もあります。』
栗栖の言葉に、美波は衝撃を受けた。
(・・・・・・・・ティンクが歩けないかもしれない。・・・・・・そういえば、体力がなくて力が使えないって・・・・・・・・)
『連中は、美波さんを捕まえたら、何をするか分かりません。』
栗栖の声に、美波は我に帰った。
「どうしたら・・・・・・。」
『僕は力がないので、火気を使うことを考えています。どうしようもなくなったら、入院している患者さんに害がない程度で、激しい音がするものを使用して、病院側が煙に巻けないように、騒ぎを起こすつもりです。でも美波さん、本当にやりますか? 僕一人でも構わないんですよ。』
栗栖の言葉には、美波を危険にさらす事のためらいが感じられた。
「やります。危険は覚悟のうえです。今度の土曜日に、必ず、ティンクを救い出します。」
美波が言うと、栗栖は納得したようだった。
『急ですが、急いで準備をします。土曜日、夕方に連絡します。では、また。』
栗栖は言うと、電話を切った。
美波は、大きなカウントダウンが聞こえてくるような気がした。
(・・・・・・・・土曜日。今度こそ、ティンクに逢える・・・・・・・・)
美波は、はやる気持ちを抑えようと、瞳を閉じた。
☆☆☆
いつものように、美波に電話をかけた智は、いつになく不愉快な思いをしていた。
「美波、だから、この間の事を話し合う上でも、今度の土曜日にゆっくり食事をしようって言ってるんだよ。」
智は、何度目かの繰り返しになる台詞を口にした。
『今度の週末は駄目なの。予定があるの。』
美波は美波で、何度目かの繰り返しになる返事をした。
「美波、俺は婚約者として、美波がどこへ、誰と出かけるのか、知る権利があると思うんだけど。」
智は痺れを切らして言った。
『言っても智には分からないわ。だって、昔の友達の友達が東京に出てくるから、色々と案内するの。』
美波の説明は、質問の返事になっているようで、ちっとも返事になっていなかった。
「美波、友達の友達って、逢った事あるの?」
智は純粋に、疑問を感じて問いかけた。
『逢った事あるわよ。電話でも話してるし。』
美波は、当然と言った様子で返事をした。
「美波、俺は喧嘩するつもりはないんだ。単純に、美波のことが心配だし、この間のことがあるから、それでゆっくり話をしたいと思っているだけなんだから・・・・・・。」
智の言葉を美波が遮った。
『だから、その次の週末だったら良いって言ってるでしょ。』
「美波、俺は、友達が来るなんて話、一度も聞いてないぞ。」
智も意地になり始めた。
『急に決まったんだもの。』
美波は言うと、口ごもった。
「週末って、ずっとその友達の友達と一緒なのか? そんなに親しいんなら、俺に紹介してくれたって良いじゃないか。いつも美波、友達を紹介するの好きじゃないか。」
智の言葉に、美波は仕方なく言った。
『日曜日の夕食なら一緒に出来ると思う。』
「夕食ね。何時? レストラン予約するから。せっかくだから、お友達も一緒に。」
智が言うと、美波は返事をしないまま黙り込んだ。
「美波?」
『じゃあ、七時。まだ、予定をちゃんと決めてないけど。』
美波は言うと、再び言葉を切った。
「わかったよ。七時ね。で、相手の人、名前は何て言うの?」
智は、訊かずにはいられなかった。
『レストラン予約するのに、名前まで要らないでしょ。』
美波の声から察すると、かなり機嫌が悪そうだった。
「そんなに怒る事ないじゃないか。昨日は何にも言ってなかったくせに。せっかく、レストラン予約して、土曜日は二人でディナーだよって言ったら、突然、友達の友達と予定があるって言い出したのは美波じゃないか。それに、婚約してからこの方、急な仕事と出張以外、週末はずっと一緒だったじゃないか。」
智は、知らず知らず声を荒立てている自分に、慌ててトーンを下げた。
「美波は、俺が心配なの分からないのか? いくら友達の友達って言ったって、美波の健康状態に詳しいわけじゃないのに。、出先で具合悪くなったらどうするんだよ。名前くらい教えておいてくれたら、何かの時に役に立つかもしれないじゃないか。」
智が言うと、美波は電話を切りそうな勢いで、『放っておいて』といった。
『そんなに干渉しないで。智には、分からない事がいっぱいあるんだから。』
美波の言葉に、智は絶句した。
『智には、分からない事いっぱいあるの。だから、そっとしておいて。』
智は、再び美波との関係の危機を感じた。
「わたかったよ。ちゃんと連絡してくれればいいから。土曜日にまた電話で話せばいいよ。食事の事は・・・・・・。」
智の言葉に、『日曜日の朝電話する。』と、美波は返事した。
「土曜日は話さないの?」
智は驚いたように訊いた。
『遅くなるかもしれないし。とにかく、土曜日は電話しないでね。』
美波の言葉をいぶかしく思いながらも、智は仕方なく納得した。
「わかったよ。約束する。そのかわり、良い子にするんだよ。疲れすぎたり、具合が悪くなったりしないように。」
『わかった。じゃあ、また。おやすみなさい。』
美波は言うと、智に口を開く暇も与えず、そうそうに電話を切った。
(・・・・・・・・なんなんだよ。やっぱり、あの喧嘩の事、根に持ってるのかな・・・・・・・・)
智は考えると、携帯をベッドの上に放り投げた。
☆☆☆
絢子の声に、美波はやっとの事で目を開けた。
灰色と苔色をしたおどろおどろしい周りの様子に、美波はカビの培養実験を思い出した。
『美波、ごめん。なかなか抜け出せなかったの。』
そういう絢子の姿は、まるで透き通っているように見えた。
『美波がいっぱい昔の事を思い出してくれたから、やっと美波に声が聞こえるようになったみたい。』
絢子に触れようと、美波はゆっくりと手を伸ばした。
『美波、美波が触れられるほど、もうそんなに体力ないんだ。』
絢子の言葉に、美波は手を引っ込めた。
「ティンク、どこに居るの?」
『・・・・・・病院。あれからずっと、・・・・・・に閉じ込められてるの。美波、・・・・・・を助けてくれる? 美波が、もっと近くに来てくれたら、・・・・・・・・・・と思う。』
段々に、絢子の声は途切れ途切れになっていった。
「ティンク、良く聞こえない。」
『・・・・・ない。戻ってきたんだ。また、・・・・・・・・・・・・な事をする・・・・・・だ。あいつら、けだ・・・・だよ。美波も・・・・つけて。もう、駄目・・・・・・。みな・・・・・・。』
絢子の声は途切れ、姿は掻き消えてしまった。
(・・・・・・・・私が力を送る事できないかしら・・・・・・・・)
美波は考えながら、自分が眠りから醒めるのを感じた。
(・・・・・・・・長い間離れてるから、波長が合わないんだ。だから、私が昔の事を思い出したりすることによって、波長が合うと、ティンクもコンタクトしやすくなるんだ・・・・・・・・)
美波は考えながら、ぱっちりと目を開けた。
「間違いない。ティンクは生きてる。栗栖さんが言ったとおり、病院に閉じ込められてるんだ。」
美波は呟くと、天井を見つめた。
(・・・・・・・・ティンク、待ってて。必ず助けに行くから・・・・・・・・)
美波は心の中で呟くと、再び目を閉じた。
☆☆☆
絢子の訪れが先触れとなったように、栗栖は翌日の晩、連絡をしてきた。
『栗栖です。今お話できますか?』
いつもながら、警戒した声に、美波は辺りの様子を窺がった。
「大丈夫です。」
美波が言うと、栗栖はすぐに話し始めた。
『やっと分かりました。心療内科のに新しく出来た入院棟、特別室が設けられているんで、特別病棟と呼ばれてるらしいんですが、そこの一室に移されたようです。いままで居所が分からなかったのは、霊安室の真裏にある遺体処理室の続き部屋らしきところに閉じ込められていたからのようです。』
栗栖の言葉に、美波は夢に見たおどろおどろしい気配を思い出した。
「遺体処理室・・・・・・。」
美波は呟きながら、背筋が寒くなるのを感じた。
『実は知り合いに、臓器の不法売買を追ってるジャーナリストがいましてね、そいつに近江病院が怪しいって吹き込んだんですよ。そうしたら、思ったとおり忍び込んでくれましてね。そいつ曰く、『ライブストックが、その奥の部屋に隠されている』って、そう言うんですよ。そうこうしてるうちに、絢子さんらしき患者が動かされたようだって連絡が入りました。』
栗栖の言葉に、美波は自分が忍び込むのが霊安室の隣ではなくて良かったと、すこし安堵した。
『ただ、病棟が病棟だけに、監視もたくさんいますし、何かあったときに逃げ道が確保できないので、それにいま頭を悩ませてます。』
「窓があれば、窓から飛び降ります。」
美波が言うと、電話の向こうの栗栖は絶句したようだった。
『美波さん、特別病棟は地上五階以上ですよ。落ちたらぺっちゃんことは言わなくても、死ぬほどの大怪我をします。死ぬ方が、確率高いかもしれません。』
栗栖は言うと、口を閉じた。
「そうですよね。ティンクが元気とは限らないし。」
美波は言うと、栗栖と同じように黙り込んだ。
『ただ、嫌な噂を耳にしたんです。連中の集まりが近々あるって。そうすると、絢子さんをもっと遠くに連れて行かれることも考えられます。いままで、ずっと近江病院に置いていた方が、おかしいくらいですから。』
「忍び込めると思いますか?」
美波は単刀直入に、問いかけた。
『情報を流してくれた看護士なんですが、疑われているようで。近々、退職すると言っていました。今度の土曜日が最後の夜勤で、その日になら助けてくれると言っています。』
栗栖の言葉からは、決断するのに時間が足りない、と言う思いがにじみ出ていた。
「やりましょう。」
美波はすぐに言った。
「中に入れば、少なくとも同じ敷地内とか、建物内に入ったら、ティンクの気配で場所は分かると思います。」
美波の言葉に、栗栖は悩んでいるようだった。
『絢子さんの状態がわからないので、美波さん一人で救出できるか分かりません。十年近くもベッドに縛られていたら、歩けない可能性もあります。』
栗栖の言葉に、美波は衝撃を受けた。
(・・・・・・・・ティンクが歩けないかもしれない。・・・・・・そういえば、体力がなくて力が使えないって・・・・・・・・)
『連中は、美波さんを捕まえたら、何をするか分かりません。』
栗栖の声に、美波は我に帰った。
「どうしたら・・・・・・。」
『僕は力がないので、火気を使うことを考えています。どうしようもなくなったら、入院している患者さんに害がない程度で、激しい音がするものを使用して、病院側が煙に巻けないように、騒ぎを起こすつもりです。でも美波さん、本当にやりますか? 僕一人でも構わないんですよ。』
栗栖の言葉には、美波を危険にさらす事のためらいが感じられた。
「やります。危険は覚悟のうえです。今度の土曜日に、必ず、ティンクを救い出します。」
美波が言うと、栗栖は納得したようだった。
『急ですが、急いで準備をします。土曜日、夕方に連絡します。では、また。』
栗栖は言うと、電話を切った。
美波は、大きなカウントダウンが聞こえてくるような気がした。
(・・・・・・・・土曜日。今度こそ、ティンクに逢える・・・・・・・・)
美波は、はやる気持ちを抑えようと、瞳を閉じた。
☆☆☆
いつものように、美波に電話をかけた智は、いつになく不愉快な思いをしていた。
「美波、だから、この間の事を話し合う上でも、今度の土曜日にゆっくり食事をしようって言ってるんだよ。」
智は、何度目かの繰り返しになる台詞を口にした。
『今度の週末は駄目なの。予定があるの。』
美波は美波で、何度目かの繰り返しになる返事をした。
「美波、俺は婚約者として、美波がどこへ、誰と出かけるのか、知る権利があると思うんだけど。」
智は痺れを切らして言った。
『言っても智には分からないわ。だって、昔の友達の友達が東京に出てくるから、色々と案内するの。』
美波の説明は、質問の返事になっているようで、ちっとも返事になっていなかった。
「美波、友達の友達って、逢った事あるの?」
智は純粋に、疑問を感じて問いかけた。
『逢った事あるわよ。電話でも話してるし。』
美波は、当然と言った様子で返事をした。
「美波、俺は喧嘩するつもりはないんだ。単純に、美波のことが心配だし、この間のことがあるから、それでゆっくり話をしたいと思っているだけなんだから・・・・・・。」
智の言葉を美波が遮った。
『だから、その次の週末だったら良いって言ってるでしょ。』
「美波、俺は、友達が来るなんて話、一度も聞いてないぞ。」
智も意地になり始めた。
『急に決まったんだもの。』
美波は言うと、口ごもった。
「週末って、ずっとその友達の友達と一緒なのか? そんなに親しいんなら、俺に紹介してくれたって良いじゃないか。いつも美波、友達を紹介するの好きじゃないか。」
智の言葉に、美波は仕方なく言った。
『日曜日の夕食なら一緒に出来ると思う。』
「夕食ね。何時? レストラン予約するから。せっかくだから、お友達も一緒に。」
智が言うと、美波は返事をしないまま黙り込んだ。
「美波?」
『じゃあ、七時。まだ、予定をちゃんと決めてないけど。』
美波は言うと、再び言葉を切った。
「わかったよ。七時ね。で、相手の人、名前は何て言うの?」
智は、訊かずにはいられなかった。
『レストラン予約するのに、名前まで要らないでしょ。』
美波の声から察すると、かなり機嫌が悪そうだった。
「そんなに怒る事ないじゃないか。昨日は何にも言ってなかったくせに。せっかく、レストラン予約して、土曜日は二人でディナーだよって言ったら、突然、友達の友達と予定があるって言い出したのは美波じゃないか。それに、婚約してからこの方、急な仕事と出張以外、週末はずっと一緒だったじゃないか。」
智は、知らず知らず声を荒立てている自分に、慌ててトーンを下げた。
「美波は、俺が心配なの分からないのか? いくら友達の友達って言ったって、美波の健康状態に詳しいわけじゃないのに。、出先で具合悪くなったらどうするんだよ。名前くらい教えておいてくれたら、何かの時に役に立つかもしれないじゃないか。」
智が言うと、美波は電話を切りそうな勢いで、『放っておいて』といった。
『そんなに干渉しないで。智には、分からない事がいっぱいあるんだから。』
美波の言葉に、智は絶句した。
『智には、分からない事いっぱいあるの。だから、そっとしておいて。』
智は、再び美波との関係の危機を感じた。
「わたかったよ。ちゃんと連絡してくれればいいから。土曜日にまた電話で話せばいいよ。食事の事は・・・・・・。」
智の言葉に、『日曜日の朝電話する。』と、美波は返事した。
「土曜日は話さないの?」
智は驚いたように訊いた。
『遅くなるかもしれないし。とにかく、土曜日は電話しないでね。』
美波の言葉をいぶかしく思いながらも、智は仕方なく納得した。
「わかったよ。約束する。そのかわり、良い子にするんだよ。疲れすぎたり、具合が悪くなったりしないように。」
『わかった。じゃあ、また。おやすみなさい。』
美波は言うと、智に口を開く暇も与えず、そうそうに電話を切った。
(・・・・・・・・なんなんだよ。やっぱり、あの喧嘩の事、根に持ってるのかな・・・・・・・・)
智は考えると、携帯をベッドの上に放り投げた。
☆☆☆