英雄は愛のしらべをご所望である

下から、拍手と共にわぁあっと歓声が沸き上がる。
演奏が終わったらしい。

先程までとはうって変わり、静かな夜が再び訪れる。

ウィルはゆっくり目を開けた。
テーブルの上には空になった皿と少量のワインが残ったグラス、そして花が一輪。

この後はどうしようか、とウィルは暫し考える。
声もかけず帰るのは、さすがにまずい。だが、すぐにセシリアが戻ってくるとも考えづらい。

食べるという目的が消えてしまうと、途端に落ち着かなくなってきた。
ゆっくりしていけとは言われたが、正直、小さな椅子に長時間座っていたくはない。だからと言って、女性の使うベッドに座るのは如何なものか。

いっそのこと、地べたに座って待っていようかとも思ったが、セシリアが来てその姿を見たら、どう感じるか。

グダグダと悩むこと自体、ウィルらしくないのだけれど、本人は全く気づいていない。
そして結局、対人関係で悩むことに慣れていないウィルは、考えることを放棄した。


どかりと腰を下ろしたのは、あんなにも悩んでいたというのにベッドの上。
セシリアが進めていたのだからいいだろう、という言い訳がウィルの頭をよぎる。

決してふかふかではないけれど、ウィルにとっては十分な柔らかさだった。

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