英雄は愛のしらべをご所望である
ウィルは黒き英雄の再来と呼ばれ、現在、王都で一番注目を集めている人物である。
戦争を終わらせた立役者であることはもちろん。平民出身であるにも関わらず、第三騎士団から第二騎士団へと短期間で昇進し、剣の腕もある。
平民の男性が一目置くのは当然で、少年達の憧れにもなるだろう。
そして何よりも、ウィルの容姿は非常に整っている。
女性達が放っておくはずもなく、いつ見ても囲まれていた。
それでも、邪険に扱うとまではいかないものの、会話は最小限で、上手く流し、その場を離れているな、とリリーは思っていた。
だてに看板娘はしていない。観察眼はあるほうだとリリーは自負している。
そんなウィルがセシリアと話す時はというと……普通の男性にしか見えないのだ。
普通に話し、表情を崩す。
特別というものを目に見える形で現さなければいけないのら、ウィルの行動は至って普通にしか思えないだろう。
だけど、比べるとはっきりする。
他者とセシリア。
その扱いの『違い』こそ、特別であることの証拠ではなかろうか。