英雄は愛のしらべをご所望である
「私から見ても、セシリアは彼にとって特別なように見えたわ」
ただの気休めのために言ったつもりなどリリーにはなかった。
しかし、セシリアの次に発した言葉に、リリーは言葉を詰まらせる。
「恋人と幼なじみ……ある意味、どちらも特別な存在でしょう? 私はたぶん、恋人になれない。 ……だって、知りすぎてるもの」
セシリアは知っている。
あのペンダントトップをウィルが苦しそうに何度も捨てては拾っていたことを。
自分を捨てた親が残していった唯一の品。それを、ウィルは現在も捨てず、身に付けていた。
孤児であることを消そうとしているウィルが、その象徴とも言える品を何故持ち続けているのか。
リリーのようにポジティブに考えられたら少しは違ったのかもしれない。
しかし、過去を知るからこそ、もし戒めのために着けていたら、などとネガティブな考えばかりが浮かんでくるのだ。
そうなってしまったら堂々巡りである。
過去と結び付くセシリアは、ある種のペンダントトップと同じ孤児を連想する存在で、また知らぬうちにウィルを苦しめてはいないだろうか。
ウィルが優しいことを知っているセシリアには、どんなにリリーから見て特別扱いに見えようとも、幼なじみを放っておけないだけ、という考えを捨てきれはしない。
手の中にある小さな紙切れだって、心配してくれるウィルの優しさの現れの一つとしか考えられなくなってくる。
いつからこんなにも自分は卑屈になってしまったのだろう。
段々と自分が嫌いになっていった。