英雄は愛のしらべをご所望である
「恋って難しいね。相手のことを知らないと踏み込む勇気が湧かないくせに、知ってしまうと踏み込んでいいのかわからなくて、結局尻込みしちゃう」
はははっーーとセシリアは力なく笑う。
「たしかにそうかも」
リリーは頷きながら、セシリアの隣で立ちあがった。
見上げた先にはカーテンの閉まった窓。あのカーテンが開くのは何時頃だろうか。
「……恋が楽しかったのは、いつ頃までだったかな」
「……それはつまり……リリーも恋してるってこと? え? うそ! 誰!?」
ばっと勢いよく顔を上げて立ち上がったセシリアにリリーは酷く嫌そうな顔をした。
ついでにぐいぐいと袖口をセシリアの目元に押し当てる。
「なーんでそういう話になるのよ」
「違うの? えっ、リリーの恋愛話とか気になる! いっつもリリーに助けてもらってるんだから、私のできることなら何でもするよ」
「それじゃあ掃除でも頼もうかなぁ」
「そういうことじゃなくて! いや、掃除はするけど!!」
わちゃわちゃと二人はじゃれあいながら裏口のドアへと向かう。
身体は少し重いけど、なんだか吐き出したら心が少し温かくなった気がした。
いっぱい悩んで落ち込むけれど、願いはいつだって一つだけ。
『どうか彼が幸せになりますように』
きっとそれだけのことなのだ。でも、だからこそ悩むのである。

