英雄は愛のしらべをご所望である
川の上を滑り一段と冷たさを増した風が三人の間を吹き抜ける。ぶるりと身体を震わせながら、セシリアはもう一度隣に座るリースへ声をかけた。
「私はリースさんが望むような演奏家ではありません。まだ修行中の身です」
「それでもいい。俺は『英雄の唄』が聞きたいんだ」
セシリアは僅かに肩を落とす。
ハープを持ってこいと言われてついて来ているのだ。断れないのは明白だろう。それでも、あがきたくなるのは……
セシリアはもう一度、背後を盗み見た。街灯の明かりで影がさしたウィルの表情は、川縁に着いた時から変わらない。
言葉を発することもなく、真っ直ぐセシリアとリースへ向けられた眼差しからはウィルが何を考えているのかも読みとれなかった。
昨夜、昔に戻ったような懐かしいやりとりをしたことが夢であったかのような感覚にすらなり、セシリアは目蓋を伏せる。
セシリアは決してハープを演奏したくないわけではない。師匠から見れば半人前だろうが、修行してきた身である。弾かねばならないと言うのなら、精一杯弾いてみせよう。
けれど、ウィルは何故セシリアに演奏させることを決めたのか。相談くらいしてもいいはずで、理由があるならば一言くらい言ってくれてもいいだろう。
ウィルの考えていることがわからない。それは、何よりもセシリアを不安にさせた。ハープの演奏を躊躇させるほどに。
「私はリースさんが望むような演奏家ではありません。まだ修行中の身です」
「それでもいい。俺は『英雄の唄』が聞きたいんだ」
セシリアは僅かに肩を落とす。
ハープを持ってこいと言われてついて来ているのだ。断れないのは明白だろう。それでも、あがきたくなるのは……
セシリアはもう一度、背後を盗み見た。街灯の明かりで影がさしたウィルの表情は、川縁に着いた時から変わらない。
言葉を発することもなく、真っ直ぐセシリアとリースへ向けられた眼差しからはウィルが何を考えているのかも読みとれなかった。
昨夜、昔に戻ったような懐かしいやりとりをしたことが夢であったかのような感覚にすらなり、セシリアは目蓋を伏せる。
セシリアは決してハープを演奏したくないわけではない。師匠から見れば半人前だろうが、修行してきた身である。弾かねばならないと言うのなら、精一杯弾いてみせよう。
けれど、ウィルは何故セシリアに演奏させることを決めたのか。相談くらいしてもいいはずで、理由があるならば一言くらい言ってくれてもいいだろう。
ウィルの考えていることがわからない。それは、何よりもセシリアを不安にさせた。ハープの演奏を躊躇させるほどに。