英雄は愛のしらべをご所望である

「そういえば、リースさんとは知り合いだったの?」


セシリアは自然と視線を横へ向ける。


「いいや、知り合いというわけじゃない。一度会ったことがあるだけだ」
「そ、そうなんだ」


相槌をうちつつも、視界に大きく映るウィルの横顔にセシリアは見惚れていた。
女性が嫉妬しそうなほどに肌が綺麗で、睫毛が長い。首筋のラインが子供の時にはなかった色気を醸し出し、なんだか落ち着かない気分になってくる。

それも仕方がないのかもしれない。
セシリアはウィルが好きなのだ。好きな人の姿を間近で見て、浮き足立たない者はいないだろう。

確かにウィルにしてきた己の過去の愚行を思うと、未だに側にいてくれるウィルに対して抱くべき感情ではないのかもしれない。だけど、簡単に割りきれないから困る。
ウィルの姿を目で追ってしまうのは、もはや幼い頃から染み付いた習慣と言ってもいい。

若干開き直りつつ、セシリアはウィルを観察し続けた。
そして、セシリアはふっとあることに気づく。

いつもなら、後を追いかけるセシリアにはウィルの後頭部しか見えない。先ほどまでもそうだった。
それなのに、現在見えているのは横顔……つまり、ウィルがセシリアと並んで歩いているということだ。


「あれ?」


セシリアは首を捻る。浮かんできたのは素朴な疑問だった。


「もしかして、体調がよくないの?」
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