英雄は愛のしらべをご所望である

「第三騎士団にいた時、先輩に口酸っぱく言われたんだ。その……」


ウィルが言いよどむ。
そんなにも言いたくないこととは何なのか、とセシリアの中で好奇心がわきだした。


「なんて?」


きらきらと目を輝かせるセシリアに、ウィルは渋い表情を返しながら、ぼそりと呟いた。


「女性を大切にしないやつなど騎士じゃない……と」


セシリアはパチパチと瞬きはするものの、言葉を発しなかった。居たたまれないのはウィルの方で、言葉数の少ないウィルとは思えないほど饒舌になっていく。


「俺があまりにも女性に、いや、人に対してか? まぁ、態度が悪いと言われて。特に騎士でいるならば紳士的でいろと。結構煩くてな」


ウィルの耳がうっすらと赤みを帯びていることに気づいたセシリアは、我慢できなかった。


「ぷっ! くくっ……ふふふ……あはははは!」


耐えきれず噴き出すと、そのまま笑いが止まらなくなる。
ウィルは驚いた表情を浮かべていたが、すぐにムスッとした顔に変わった。


「おい」
「だ、だって……ふふふーー」


注意を受けて嫌な顔をしているウィルが容易に想像できる。それどころか、それを律儀に守っているウィルなんて、すごく可愛いではないか。
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