英雄は愛のしらべをご所望である
ハープを胸に抱え直し、セシリアは恐る恐るウィルを見上げた。
ウィルがどのような意味をもってセシリアを女性として扱おうと思ったかはわからない。
生物的に見ればセシリアはもちろん女性だ。けれど、ウィルがセシリアを女性として見ていたかといえば疑問が残る。
セシリア自身、こんな結論にいたるのは些か悲しくもあるが、実際、セシリアはよくて妹であろう。
どんなにセシリアが前向きであっても、好きな人から向けられる態度くらいは見極められる……つもりだ。
しかし同時に、いや待てよ、とセシリアは考える。
ウィルと別れたのは、まだセシリアが『少女』の部類に入る頃のこと。八年経ち、ウィル同様、セシリアもまた女性へと成長した。
ウィルの中でセシリアがどのような立ち位置にいるか不明だが、女性として扱ってくれたことには素直に喜んでもいいのではないだろうか。
ここで、『またまたぁ、そんなこと思ってないくせに』などと発言しては、それこそ妹から抜け出せない。
恋する乙女、セシリアは短時間で頭をフル回転させる。そして、若干固さは残るものの、微笑みをたたえた。
「うん、そうだよね……ウィルの隣を歩けるなんて嬉しいな」
「そんなものか?」
ウィルの言葉を受けたセシリアは、やっぱり深い意味はないんだな、と心の中で苦笑いを浮かべつつ、そんな姿がウィルらしくて、無意識に笑みを深めた。
「ふふふーー、そんなものなの。女は複雑そうに見えて、結構単純なところだってあるんだから」