クールな王太子の新妻への溺愛誓約

すでに何度かベティは“クレア”と呼んでいるが、念のための確認だろう。


「ええ」


クレアははっきりと答えた。


「それにしましても、盗賊に襲われたことで当時のことを思い出されるなんて、とても辛い思いをされたとお察しいたします」


眉をハの字にして、ベティが苦しそうに顔を歪める。


「その後、お加減はいかがですか? 頭が痛んだり、どこかに不調はございませんか?」

「今のところは大丈夫よ。ありがとう。心配させてごめんなさい」


ベティは「いいえ」と首を横に振った。
頭が割れるように痛かったのは馬車で盗賊に襲われた時だけだが、あの時の痛みは思い出すだけでも辛い。振りかざされた剣で頭を突かれたら、きっと同じような痛みだろう。

だが、堅い殻の中に封じ込めていた記憶を呼び覚ますともなれば、それも当然かもしれない。

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