クールな王太子の新妻への溺愛誓約
母に連れられて度々行っていた街の花屋。パトリシアはそこの娘だ。
「クレア様が盗賊に襲われて命を落とされたと聞いた時はショックで……。それがこんなにお美しい王女様になって、こうしてフィアーコにいらっしゃるだなんて……」
ついさっきまで笑顔だったパトリシアは、急に涙ぐんだ。
「やだ、パトリシアったら泣かないで。そんなに喜んでくれるなんて、私はとっても幸せだわ」
クレアがパトリシアの涙をハンカチで拭う。
七年の時を経て突然現れた自分をこうして快く迎え入れてくれるのだ。嬉しさと感謝でクレアはいっぱいだった。
「私の方こそ幸せ者です。クレア様と再会できた上、侍女として同じ王宮に仕えていられるのですから。ほかにもタカマッサ出身の者はたくさんおりまして、みな同様にとても喜んでおります」
「ありがとう……」
パトリシアの手を強く握るクレアのうしろで、ベティもまた目頭を熱くしていた。
部屋をなんともいえない温かい空気が包み込んでいたその時。