クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「クレア!」


そう呼ぶ声と共にレオンが部屋へ駆け込んできた。眉間に寄せられた眉、真剣な眼差しは、クレアの姿を見て若干緩む。


「どうかなさったのですか?」


クレアが尋ねると、レオンの視線が横へと揺らいだ。そばにいるパトリシアを見たようだった。
レオンの態度からなにかを悟ったか、パトリシアは「失礼いたします」とそそくさと部屋から出て行った。

そのうしろ姿を見送ってから、レオンが「なにか変ったことはないか」とクレアに向き直る。


「変わったこと、でございますか?」


ベティと顔を見合わせ、クレアは「いいえ」と首を横に振った。


「……そうか」


レオンが小さく息を吐く。


「なにかあったのですか?」

「……いや」

< 230 / 286 >

この作品をシェア

pagetop