クールな王太子の新妻への溺愛誓約
レオンはそう言うが、なにもないという顔ではない。いつもより声もかなり低かった。
「正直に答えてください。そうじゃないと、もう揚げパンを一緒に食べてあげませんから」
どことなく重苦しい空気を払しょくしようと、クレアがわざとおどけて言う。
ところがそれでもレオンは、表情を引きしめたままだ。それを見て、クレアもただごとではないと悟る。
「レオン様、なにがあったのですか?」
クレアはレオンの顔を見上げた。
その真っ直ぐな眼差しに観念したように、レオンが口を開く。
「実は、捕えていた者が消えたんだ」
「捕えていた者……?」
「例の盗賊だ」
湖の帰りにクレアたちを襲った者たちのことらしい。
「……消えたって、逃亡したということですか?」
レオンは腕を組んで重々しく頷いた。