クールな王太子の新妻への溺愛誓約

レオンはそう言うが、なにもないという顔ではない。いつもより声もかなり低かった。


「正直に答えてください。そうじゃないと、もう揚げパンを一緒に食べてあげませんから」


どことなく重苦しい空気を払しょくしようと、クレアがわざとおどけて言う。
ところがそれでもレオンは、表情を引きしめたままだ。それを見て、クレアもただごとではないと悟る。


「レオン様、なにがあったのですか?」


クレアはレオンの顔を見上げた。
その真っ直ぐな眼差しに観念したように、レオンが口を開く。


「実は、捕えていた者が消えたんだ」

「捕えていた者……?」

「例の盗賊だ」


湖の帰りにクレアたちを襲った者たちのことらしい。


「……消えたって、逃亡したということですか?」


レオンは腕を組んで重々しく頷いた。

< 231 / 286 >

この作品をシェア

pagetop