クールな王太子の新妻への溺愛誓約

クレアは信じられない思いでいっぱいだった。

通常は王宮の地下深くにある牢獄。フィアーコのそれは見たことはないが、ピエトーネでは幾重にも鍵が掛けられた上に見張りが付き、厳重に管理されている。そこから逃げることなど不可能だからだ。

レオンによると、今朝早くに見張りの交代があった時点で姿がないことが判明したらしい。


「今、騎士団がしらみつぶしに王宮内をあたっているところだ。いいか、クレア。絶対にこの部屋から出るな」


レオンはクレアの肩に両手を置き、顔を覗き込むようにして強い口調で言った。


「……はい」


この広い王宮の中で、盗賊がわざわざクレアの部屋へ来るとは思えない。逃げたいのなら、なおさらそうだろう。
だが、襲われた時のことが蘇り、クレアはどうしても不安になる。


「外に警護の者を付けておく」


レオンはそう言うと、ドアに向かって「コスナー」と名前を呼んだ。

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