クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「はい」
クレアとベティは、急ぐマートの後を追いかけた。
マートが足を向けたのは、普段クレアが使うことのない通用口のようなところだった。薄暗い通路を抜け、細い階段を下りていく。
「ねえ、マート、いったいどこへ行くの?」
「この宮殿から出るようにとのことでございます」
「え? 宮殿から出るの?」
てっきりどこか別の部屋へ行くものだと思っていたクレアは、つい大きな声になる。
マートは『しー!』とばかりに、人差し指を自分の唇に当てた。潜んでいる盗賊に気づかれては困るということだろう。
クレアは「ごめんね」とマートに口パクで謝った。
「裏に馬車を用意してあります」
歩きながらマートが小声で言う。
まさか馬車まで用意されているとは。宮殿だけでなく、王宮から出てしまうようだ。
周りを気にしながら、マートの足がさらに速まる。クレアとベティは置いて行かれないように、ドレスの裾を摘まんで追いかけた。