クールな王太子の新妻への溺愛誓約
重い鉄製のドアを開けると、馬車が木に隠れるようにして置いてある。暗がりでよく見えないが、御者台に人影が見える。
「あの馬車です」
マートが指を差す。
クレアたちはその馬車に乗せられた。
「いったいどこへ行くの?」
「少し時間がかかりますが、安全なところです」
王宮より安全なところがあるのだろうか。クレアは首を傾げたが、レオンが指示するのだから、きっとそうなのだろうと思い直した。
少しすると、馬車が停められた。
マートはさきほど『少し時間がかかります』と言っていたが、もう着いたのだろうか。ベティと顔を見合わせていると、マートが不意に馬車を降り立った。
「どうしたのかしら」
「ええ、本当になんでしょうね」
クレアとベティは落ち着かない様子だ。