クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「マートってば」
クレアが呼びかけると同時に、馬車が再び動き出す。
「――ちょっと、マート! 止めて! ベティはどうしたのよ!」
クレアが馬車のドアに手をかける。動いているのも厭わずにドアを開けた。
「クレア様! おやめください!」
「いやよ! ベティは!?」
振り返ったクレアは、マートの左手によって強引に引き寄せられてしまった。包帯の巻かれている腕が、クレアの腰に回されている。
「……マート、腕……?」
「あっ……しまった。ばれてしまいましたね」
そうは言うものの、マートは別段困ったようには見えなかった。むしろその逆で、楽しんでいるようにすら見える。
怪我を負っているというのは嘘だったのか。クレアはなにがなんだかわからなかった。