クールな王太子の新妻への溺愛誓約

マートがクスクスと笑う。

今まで見てきたマートとはどこか違って見える。これまでのマートは照れたように笑い、性格も控えめだった。ところが今クレアの目の前にいる彼は、自信に溢れて堂々としている。

おそらく今馬車を操っている者は、捕らえられていた一味だろう。


「それより、ベティはどうしたの!? まさか――」


クレアは口もとを手で押さえた。頭を恐ろしい想像が過ったのだ。
心臓が早鐘のように動き出す。


「大丈夫です。手にかけてなどいませんから。薬でちょっと眠ってもらっているだけです」


薬で眠らせた……?
クレアは信じられないという顔でマートを見た。


「どうしてなの!? どうしてそんなことをしたの!?」


クレアは気持ちが抑えきれず、マートに詰め寄った。

< 243 / 286 >

この作品をシェア

pagetop