クールな王太子の新妻への溺愛誓約

捕らえていた者たちの逃亡を手伝い、ベティを薬で眠らせるとは。レオンに忠実だったマートがなにを考えているのか、クレアにはまったくわからなかった。


「モンタリスクという国を知っていますか?」

「モンタリスク……」


クレアが繰り返す。聞いたことのある国名だ。


「ピエトーネの遥か東。大陸の極東にある小国です」


マートの説明を聞いて、クレアは思い出した。ピエトーネに鉱山が発見された時に、“マリアンヌ”との婚姻を望んでいた国のひとつだ。
小国であるが故に、ピエトーネに相手にされなかった。ピエトーネの国王アンニバーレに謁見することすら許してもらえなかった国だ。


「私はそこの王太子です」

「――え!?」


思いもしないマートの告白だった。
ピエトーネと同様に農業を糧にしている小国であるがために、軍事力は極小。大陸でも下位の一、二を競う、弱小国だ。

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