クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「――や、やめて!」


クレアは悲鳴に近い声を上げて、その手を払った。


「でも驚いたよ。マリアンヌが、実はタカマッサのクレアだなんてね。これも運命かもしれない。幼い頃に会ってひと目惚れしたクレアが、また僕の前に現れたのだから」


なんと、マートとは幼い頃に会ったことがあるという。
そんな記憶のないクレアは、首を横に振り続けることしかできない。


「湖の帰りに、本当はレオンを討ち取るつもりだったんだ」

「なんてことを!」


クレアが声を荒げる。


「そして、そのまま君を奪ってモンタリスクへ連れ去ろうとね。ところが突然、倒れたものだから動揺して手元が狂ったよ」


左腕の傷は、自分の剣で誤って切りつけたものだったらしい。それも、ごく浅い傷。
クレアが気を失ってしまったことで延期になった計画を、今夜実行に移したということだった。

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