クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「そういうわけだから、クレアは今から僕の妻になる」
「そんなのおかしいわ! 私はレオン様との結婚が決まっているの!」
「だからこうして君を連れ去ったのさ。婚儀の前にね」
マートは悪びれる様子もなく、ニヤリと笑った。
「まだ、レオンの物にはなっていないだろう?」
マートの指先がクレアの頬をなぞる。
クレアは「やっ……」と顔を背けた。
「ベティから聞いたよ。クレアはレオンとの婚儀が終わるまでは純潔だとね。その前に僕がクレアのすべてを奪ってしまえば、ほかの男の手にかかった君を妃として迎え入れるわけにはいかないだろう。なんせフィアーコは大陸一の大国。他国の目もあるだろうから、穢れた妃はいらない」
マートはクククと肩を揺らして笑った。
クレアの背筋を嫌な汗が伝う。
「で、でも、今にレオン様が助けてくれるはずだわ」
クレアは震える心をなんとか押し殺し、強気に言い放った。