クールな王太子の新妻への溺愛誓約
ベティが目を覚ませば、マートがクレアを連れ去ったことがレオンに報告される。そうすればきっとすぐに。
(大丈夫よ……。絶対にレオン様が……)
クレアは自分に言い聞かせた。それでも不安に押しつぶされそうになるのは、馬車がどんどんフィアーコから遠ざかっていくせいだろう。
「レオンが僕の仕業だとわかったところで、どこへ連れ去ったのかまではわからないだろう。僕の正体を知らない限り、追いかけてくることは困難だ」
マートが自信たっぷりに言って笑う。
クレアは唇を噛み締めた。確かにそのとおりだと思ってしまったから。
「だからもう諦めて、潔く僕の物になろう」
マートがクレアの肩を無理やり引き寄せる。
「――いや!」
懸命にマートを押し返そうとするが、力で敵うはずもない。クレアはマートの腕の中にすっぽりと包み込まれてしまった。ガッチリと回された腕はビクともしない。
「離して!」