クールな王太子の新妻への溺愛誓約
クレアが体をよじるものの、その手が外れる気配はない。
レオンは馬から華麗に飛び降りた。その顔には怒りが満ちている。
「クレアから離れろ!」
「そう言われて、『はい、そうですね』と従う者がいるのなら、今すぐこの場に連れてきてほしいですよ」
マートはせせら笑うように顔を歪めた。
「それにしても、ずいぶんと早いじゃありませんか。まさかこんなに早く追いつかれるとは思いもしませんでしたよ。僕の計算では、ベティは明日の朝まで宮殿の裏口で伸びているはずだったのですから」
「それは残念だったな。クレアを連れ去ることは、この私が許さない。早くクレアから離れろ。さもなければ……」
レオンの声は、聞いたこともないほどに低かった。地を這うような声だ。レオンの手が剣にかかる。
それを察知したマートの顔が右へと逸れる。そして、「やれ!」と男に命じた。御者台に乗っていた男だ。
どこに身を潜めていたのか、突然レオンの前に立ちはだかった男が剣を構える。
「レオン殿下、剣を下に置いてくださいませんか?」