クールな王太子の新妻への溺愛誓約
丁寧な口調なのに、どこか棘がある。慇懃無礼な言い方だった。
「従わないというのならば、僕にも考えがあります」
カチャという金属音がクレアの耳のそばで聞こえた。
顔はレオンへ向けたまま、クレアは目線だけでその音源を探る。
「――っ!」
闇に包まれた景色の中、キラリと銀色に光るものがクレアの目に入った。
――ダガーナイフだ。
クレアは呼吸を止め、体を強張らせた。
「マート! どういうつもりだ!」
「レオン殿下が剣を置いてくださらないというのなら、僕にも覚悟があります。クレアをこのダガーナイフで刺し、自分も後を追いましょう」
マートが居丈高に言い放つ。
レオンと添い遂げる前に命を絶たれそうになる事態は、クレアの想像の範疇を越えていた。