クールな王太子の新妻への溺愛誓約
もしも今、マートの指示どおりに剣を足元に置いたならば、きっとマートの侍従だという男がレオンに切りかかるだろう。そうなれば一巻の終わりだ。
レオンのいない世界に、クレアの生きていく意味はない。クレアは奥歯をグッと噛み締めた。
「さぁ、剣を早く置くがいい」
マートの声は不気味なほどに冷静だった。
レオンがゆっくりと手を下ろしていく。そして、足元にそっと剣を置いてしまった。
マートの侍従がそれを足で遠くへ蹴る。ザザッという音を立て、剣が地面を滑っていった。
クレアは咄嗟に、自分に向けられていたダガーナイフのグリップをマートの手の上から掴んだ。
「クレア!?」
マートが驚きに怯む。
「私を刺すつもりなら、早くそうなさい」
クレアは、ダガーナイフの切っ先をさらに自分の喉元へと近づけた。