クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「クレア! やめろ!」
叫び声に近いレオンの声が耳を裂く。
だが、レオンを助けるために、クレアはこうするよりほかになかった。
「な、なにをするつもりだ、クレア」
マートの声が震える。クレアがまさかそう出てくるとは思わなかったのだろう。
マートの侍従も目を丸くしてクレアを見ていた。
「レオン様を殺めるというのなら、私もこの場で命を絶ちます」
揺らぐことのない強い瞳でマートを見据える。
マートは怯えたような表情でクレアを見つめていた。
両手に力を込め、息を短く吸い込んだ時だった。
殴るような鈍い音とともに、「んぐっ!」という呻き声が上がる。マートと同時に音のした方を見た次の瞬間、クレアの手からナイフが空へと高く飛び、遠く離れた地面へと突き刺さった。
レオンはすかさずクレアを自分のうしろへと匿う。
マートは弧を描くナイフをコマ送りのようにして見ていた。