クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「クレア! やめろ!」


叫び声に近いレオンの声が耳を裂く。
だが、レオンを助けるために、クレアはこうするよりほかになかった。


「な、なにをするつもりだ、クレア」


マートの声が震える。クレアがまさかそう出てくるとは思わなかったのだろう。
マートの侍従も目を丸くしてクレアを見ていた。


「レオン様を殺めるというのなら、私もこの場で命を絶ちます」


揺らぐことのない強い瞳でマートを見据える。
マートは怯えたような表情でクレアを見つめていた。

両手に力を込め、息を短く吸い込んだ時だった。

殴るような鈍い音とともに、「んぐっ!」という呻き声が上がる。マートと同時に音のした方を見た次の瞬間、クレアの手からナイフが空へと高く飛び、遠く離れた地面へと突き刺さった。

レオンはすかさずクレアを自分のうしろへと匿う。
マートは弧を描くナイフをコマ送りのようにして見ていた。

< 255 / 286 >

この作品をシェア

pagetop