クールな王太子の新妻への溺愛誓約
遠くから聞こえる蹄の音があっという間に近づき、何十頭もの馬が鼻を鳴らしてクレアのそばで止まった。フィアーコの騎士団だ。
マートは、観念したように地面に膝から崩れ落ちた。
それも当然だろう。騎士団に四方を囲まれ、自身は丸腰。侍従は少し離れたところで伸びていた。
さきほど聞こえた呻き声は、マートの侍従のものだった。隙を突いたレオンから、みぞおちに拳をお見舞いされたのだ。
「調べはついているぞ、モンタリスクのマート」
レオンが放ったひと言にハッとして、マートは膝を突いたまま彼を見上げた。
「……どうしてそれを」
腑に落ちないといった様子でマートが眉をひそめる。
レオンは汚らわしいものを見るような目でマートを見た。信じていた者から裏切られた悔しさも滲む。
「最初に不審に思ったのは、クレアと三人で湖へ行った時だ。クレアが紅茶をこぼした時にマートが胸元から出したハンカチ。あれには“獅子の紋章”が刺繍されていた」