わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

整体に行くときは、いつも伸縮性のあるパンツに決めている。トップスもしわにならない楽なものを着ているので、気にすることは何もなかった。

「では、仰向けにお願いします」

スリッパを脱いで姫はゆっくりベッドに上がると、仰向けに寝た。

「失礼します」と先生は言うと、大きな厚手のタオルケットを姫のからだがすっぽり隠れるように掛けた。
「寒くないですか」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」

「では、これから始めますね。頭を少し触りますけど、もし途中で嫌だなと思ったらすぐ言ってください」

「はい」

「軽く目を閉じて、リラックスして」

「はい」
言われるがまま、姫は目を瞑った。



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