わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

急に場面が変わる。
石牢に女がひとり閉じ込められている。
「ごめんね、助けてあげられなくて」と、石牢の外側で泣いている別の女。

蜂の大群の映像。
夏の炎天下、砂漠を歩いている女。
海の中に潜っている女。
場面はめまぐるしく変わっていく。

また、石畳に戻る。それから、石牢へ。
「大丈夫ですか」という先生の声で目を開けると、姫は自分が泣いていたことに気づき、驚く。

「先生」

ベッドの左側に立った先生が、心配そうに姫を見下ろしていた。



< 20 / 82 >

この作品をシェア

pagetop