わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
「先生、わたし、どうしてたんですか」
「途中から泣きだされて、あまりにも辛そうだったので、声をかけました」
「助けてあげられなかったんです、わたし。それで……」
思い出したのか、姫は泣きじゃくった。
「大丈夫ですよ。……後頭部の痛みは、いかがですか」
「あれ? 軽くなってるみたい」
「良かったです」
「あの石牢に閉じ込められていたのは誰なんですか」
「誰だと思いますか」
「おかあさん、かな」
「助けてあげられなくて、外側で泣いていたのは?」
「わたし、だと思います。……先生にも見えてたんですね」