わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
先生の口から完全に姫の口へと移され、その最後の一滴まで姫は飲み終えたが、お互い離れがたい思いがあった。
いつの間にか姫も先生の背中に腕を回し、きつく抱き合っていた。
それまでベッドに座っていた姫のからだが、ゆっくり倒された。
そのあとのことは、よく覚えていない。
フランキンセンスの香りに包まれて、甘美なときが流れていった。
なるようになっただけ。
ありきたりの言葉で言われたくはないが、きっと周りから見たらそんな展開だろう。
いくらふたりに、特別な事情があろうとなかろうと。
帰りに姫は、先生から小さな箱を渡された。
家に帰ってから、夜寝る前に開けるように、と言われ、これこそが玉手箱なんじゃないか、と少し不安になった。
先生はまた笑って、「大丈夫。おばあさんになったりしないよ」と言った。