不機嫌なジェミニ
「ジンさん…なんでもないよ」

と私が慌てて言ったけど、

「やっぱり、成宮 仁さんだ!
トウコちゃんの苗字、成宮になってたからさあ、会わせて欲しいって何度もお願いしてたんだよねえ!」

とそのオトコは目を輝かせてウットリとジンさんを見る。

「え?」

と、ジンさんが固まる。


「カッコいい。僕のタイプど真ん中なんですう。どうしてこんな子どもと結婚しちゃったんですかあ?」

とジンさんに迫っていく。

「ちょっと、ジンさんは私の夫です!
近寄らないでください」

と私がそのオトコとジンさんの間に入ると、

「なによ!ブス!」

「ジンさんは、私が好きなんです!」

「きっと悪い魔法にかかってるのよ!」

「なんですってえ!!」

と本気の喧嘩になりそうな雰囲気に、
ジンさんがやっとこの状況が理解できたようで、私をヒョイと持ち上げ、

「いくぞ、トウコ。
俺はトウコを愛してるんだよ。
じや、またな。」

と真面目な顔を作って私を車に放り込み、車を発進させる。


「…悔しい
あんなオトコに絶対負けないんだから…」

と私が呟くと

ジンさんは我慢ができなくなったようで、
笑い出し、

「俺は心配がなくなったって事だな」

と朗らかな声で言った。

「私が心配なんです!
絶対あのオトコに近づかないでくださいね!!」

と私は鼻息荒くジンさんに言い渡した。


ジンさんは

「はいはい。奥さん」

とクスクス笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でた。




p.s.ジンさんを諦めたオトコは
アントーニオと仲良くなって、イタリアでずっと生活する事になりましたとさ。


おしまい。



< 153 / 159 >

この作品をシェア

pagetop