不機嫌なジェミニ
3年後。
ローマから日本に向かう飛行機に乗り込んだ私は座席に荷物を置いて大きな息をつく。

「トーコちゃん。これからだからね。」と妹の香澄がクスクス笑う。

「わかってるって」と私が口を尖らせると、

「2人とも飛行機に乗ってまで、揉めないでください。
トウコちゃん、マグはどこ?」と蘭子さんが私の顔を見る。

「えっと、ここに入っていたと思うけど…」と大きいトートバッグをガサガサと探る。

「お客様、大きな手荷物は収納いたしますが…」

「…は、はいちょっと待ってください!」

「トウコ、マグなら前のポケットだろ。」

と落ち着かせるように私の頭をポンポンと撫でて隣の席に座るジンさんの片手には
1歳半になる娘の杏(アン)が抱っこされ、

「ねえ、ジンさん、剣(ケン)の恐竜のぬいぐるみはどこ?」

と私の2つ前の蘭子さんの隣の席に座ろうとしているセイジさんが抱っこしているのも
杏のよく似た双子の弟で(2卵生双生児なのにどちらもジンさんに似ている)私とジンさんの息子だ。

成田への直行便で日本まで15時間。

これから双子のギャングを連れて
無事帰国出来るかさっぱりわからない。

と大きなため息がでるけど、

私以外の人達はなんとかなる

と思っているらしい。

あいかわらず、
私は心配性なのかもしれない。




< 154 / 159 >

この作品をシェア

pagetop