不機嫌なジェミニ
スッキリ目覚めると
明るくなった部屋の知らない天井がみえた。

そういえば、ジンさんの家に泊めてもらったんだった。と思い出すと同時に

ぴったりと寄り添う温もりとわたしの身体に巻きつく腕を感じ、横を向くとジンさんの端正な顔があった。

…これはベッドの上で抱きしめられている。

と理解すると、

「わ!」と大声が出た。


「なんだよ。もう、起きたのか?」と、ゆっくり目を開いたジンさんは私をギュッと抱き直して

「熱はさがってるみたいだな。」と首筋に顔を埋めてくる。

「ごっ、ご迷惑おかけしましたが
じ、状況の理解がおいつきません!
熱を出して、ここで休ませてもらって…
…私はなにか…その…やらかしましたでしょうか?」
と必死に腕を脱け出ようとジタバタすると、

「昨日、夜中にあったことは事は覚えてないのか?」とまだ私を抱きしめたまま、呆れた顔で私の顔を覗く。

…ジンさんの顔が近い!

「…」私が顔が近さに固まり、返事ができないでいると、

ジンさんは、横を向いてはああーと大きなため息をつき、

「やらかしてはいるが、まあ、いい…、
トウコは熱を出してここで寝ていただけだよ。」とジンさんは私の身体を離して起き上がり、

「飯、くうか?」と私の顔を見る。

…『やらかしてはいるが、まあいい。』って…

結論は覚えてなくて良いってことだよね。と無理やり納得しておく。

夜中の唇の感触はきっと熱の高かった私の妄想だ。と結論づける。


私はやっといつもと変わらないジンさんの様子に安心して

「…はい!」と返事をすると、ジンさんはまた、大きなため息のあとで、

「部屋のシャワーを使ってリビングに来い。
着替えは昨日、トウコのために用意してもらったから、ちゃんと着替えて来るように」

と言い聞かせるように私の顔を覗き込んで部屋を出て行った。



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