クールな部長とときめき社内恋愛
「彼女って、うちの社員?」
「はっきりとはわからないんだけど、逸希さん、営業事務の女の子と親しそうにしているらしいから、もしかしてその子かな」
「ええっ、ちょっとショック。その事務の子、名前は?」
「なんだっけ……知らない子だったから、忘れちゃった」
ふたりは、ここにいるわたしが藤麻さんの恋人だとわかっていないみたい。自分の話をされているのはなんだか気まずいし、聞かないようにしたいけど、すぐ隣で話しているから無理だった。
しかも化粧室を出るタイミングが重なってしまい、わたしは彼女たちの数歩後ろを歩いて通路へ出る。
「でもさ、結婚するならお兄さんのほうがよくない? 藤麻春伸さん、近寄りがたい雰囲気はあるけど、社長の息子だったら継ぐのは兄の春伸さんでしょ」
「そうだよね。将来会社を継ぐほうと結婚するのが幸せかも」
「逸希さんも有能だけど、結局“弟”だもん。最初は逸希さんのことかっこいいって言ってたのに、藤麻兄弟が社長の息子だって噂聞いたらお兄さんの春伸さんがいいって変わったりする人結構いるよね」
「もしかして、今の彼女もそのうち春伸さんにのり替えたりして!」
笑いながら話している前のふたりに、わたしはぎゅっと掌を握った。
ちょっと、そういう言い方はないんじゃないの? どちらが会社を継ぐかなんて、そんなことはどうでもよくて、好きっていう気持ちに関係ない。
冗談だとしても、わたしが春伸さんにのり替えるなんてことを言わないでほしい。
「はっきりとはわからないんだけど、逸希さん、営業事務の女の子と親しそうにしているらしいから、もしかしてその子かな」
「ええっ、ちょっとショック。その事務の子、名前は?」
「なんだっけ……知らない子だったから、忘れちゃった」
ふたりは、ここにいるわたしが藤麻さんの恋人だとわかっていないみたい。自分の話をされているのはなんだか気まずいし、聞かないようにしたいけど、すぐ隣で話しているから無理だった。
しかも化粧室を出るタイミングが重なってしまい、わたしは彼女たちの数歩後ろを歩いて通路へ出る。
「でもさ、結婚するならお兄さんのほうがよくない? 藤麻春伸さん、近寄りがたい雰囲気はあるけど、社長の息子だったら継ぐのは兄の春伸さんでしょ」
「そうだよね。将来会社を継ぐほうと結婚するのが幸せかも」
「逸希さんも有能だけど、結局“弟”だもん。最初は逸希さんのことかっこいいって言ってたのに、藤麻兄弟が社長の息子だって噂聞いたらお兄さんの春伸さんがいいって変わったりする人結構いるよね」
「もしかして、今の彼女もそのうち春伸さんにのり替えたりして!」
笑いながら話している前のふたりに、わたしはぎゅっと掌を握った。
ちょっと、そういう言い方はないんじゃないの? どちらが会社を継ぐかなんて、そんなことはどうでもよくて、好きっていう気持ちに関係ない。
冗談だとしても、わたしが春伸さんにのり替えるなんてことを言わないでほしい。