クールな部長とときめき社内恋愛
逸希さんの部屋で話をしてから一週間。仕事は少し落ち着いてきて、逸希さんとの付き合いに変わったこともなく、順調だと感じていた。
わたしが作ったお弁当をお昼休みに一緒に食べてくれて、『美味しい。また作って』と褒められたことがうれしかった。

今度お弁当を作るときは、もう少し早起きしておかずを一品増やそうかな。
休憩時間、飲み物を買うために自販機へ向かいながらそんなことを考えていると、たどり着いた休憩スペースに逸希さんの兄、春伸さんがいた。

以前、話したときはなんだか気まずくて、まともな会話ができなかった。
目が合ったので、とりあえずお辞儀をしてそばにある自販機に移動する。

春伸さんの姿を見ていたら、逸希さんの部屋で話したことを思い出した。
兄弟の仲は悪いってわけじゃないんだよね。ただ、逸希さんは春伸さんと比べられることがあって、複雑な気持ちになったりするんだろう。

春伸さんがどう思っているのかはわからないけど、険悪な仲ではないみたいだし恋人のお兄さんだから、少しは親しくなりたいなって思う。
飲み物を買った後、自分から話しかけてみようかな?

そんなことを思いながら自販機の前に立ったとき、後ろから投入口にお金が入れられた。
振り向くと、春伸さんが立っている。

「え……あ、あの……」

「買ってやるよ。弟がまだ世話になっているみたいだから」

そう言った彼は、含みのあるような笑みを口もとに浮かべた。
逸希さんとわたしが付き合っていること、もう知っているのかな?
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