クールな部長とときめき社内恋愛

「倉山常務の行きつけの店、好きなもの、趣味、そこから考えられる相手の性格。商談を上手くに進めるために、少しでも機嫌を取りたかった。たしか、倉山常務は駅の近くのレストランによく行くらしいな。以前、噂を耳にしたことがあった」

言葉が、ひとつずつ頭の中に入ってくる。
相手の言いたいことがわかってしまうことが、だんだんと怖くなってきた。

「君は元恋人の話を逸希にしなかったか？　なぜが頻繁に構ってきて、気づいたらあいつは君のそばにいて、自分の話を聞いてくれただろ。それは、倉山常務の趣味や好きなもの、なんでもいいから聞きたかったとしたら？」

ドクン、と嫌な胸の鼓動が全身に響く。

たしかに最初の頃、逸希さんはどうしてわたしのことを構ってくるんだろうって、不思議だった。なにかあったとき、いつも彼はそばにいてくれて、元カレのことで悩んでいたときもよく話を聞いてくれた。

「最近、倉山常務には婚約者ができたらしい。相手の女性は、シャインと新しく業務提携を結んだ会社の娘。倉山常務が君と別れた理由は、それにあったんだよ。君が倉山常務に未練を持って迷惑をかけることなく、逸希に夢中になってくれてよかった。シャインの業績がさらに伸びれば、うちの会社も好都合。おかげで今回のシャインとの取引はこちらも十分納得のいくものだ」