クールな部長とときめき社内恋愛
晃久さんと女性が歩いているところを見かけたとき、ショックで動けなくなってしまって、そうしたら逸希さんが現れた。

偶然だって思っていたけど、あれは“偶然を装った”のか。
逸希さんは、晃久さんの婚約者の存在を確かめて、わたしよりも先に知っていた?

わたしが晃久さんの元恋人だから、わたしに近づいて優しくしてくれて、助けてくれたの?

それって……今までの逸希さんの行動は、わたしを想ってのものではなかったということだろうか。

「君のこと、適当に構っているんだろうと思っていたけど、まさか付き合うとはね。そこまでやるのかって正直驚いている」

高いところから突き落とされたような気分だった。
そんなはすないでしょう、と目の前にいる春伸さんに掴みかかりたいけど、相手はとても落ち着いていて、冗談を言っているようには見えない。
だけど、信じたくなかった。

「嘘、ですよね……?」

「信じられないのなら、本人に直接聞いてみればいいだろ」

わたしの表情から察したのか、春伸さんはそう言って目を細めた。
衝撃が大きすぎて反応する言葉が出ず、わたしは固まったままぼうっとする。

嘘だって思う。こんな話、一方的に聞いて信じるのは逸希さんにも悪い。

「し、失礼します」

買ってもらった飲み物のペットボトルを握りしめて、わたしは春伸さんから離れた。
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