クールな部長とときめき社内恋愛
もう、ダメかもしれない。
弱気になったわたしは、結局逸希さんを避けてしまい、それからも彼とは気まずい状況が続いていた。

“シャインとの商談成功の祝いに飲み会をしよう!”
金曜日の休憩時間、飲み会の話で盛り上がる周りの社員たちの輪から離れたわたしは、先にデスクへと着いた。

「友野さんは不参加でいいの?」

「はい、すみません、今回は行けません」

付き合いだからと、なるべく飲み会には参加するようにしていたけど、今日の主役は逸希さんだろうから行くのは避けようかなと思った。

大事な商談も上手くいったし、逸希さんはそろそろ二課へ戻るかもしれない。全体の営業成績が中程度の三課よりも、トップを争う二課に戻ったほうが苦労しないだろうし。

彼が戻ったら、わざと避けなくても会う機会は減る。そのうち彼のことを考えることもなくなって、辛い気持ちも消えればいい。

仕事を終えて居酒屋へと向かうメンバーを見送り、少しだけ残業をした後わたしはオフィスを出た。
ひとりで静かな通路を歩いて、たどり着いた階段を下りようとしたとき、上の階から並田さんが降りてきた。

立ち止まったわたしは、逸希さんが彼女と話をしているのを見てムカムカしていた頃の自分を思い出す。
逸希さんから話を聞いて自分が誤解していたというのがわかった後は、並田さんの存在を気にするようなことはなかったけれど、あのときの恥ずかしい自分が頭に浮かぶと、なんだか居た堪れない気持ちになる。
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