クールな部長とときめき社内恋愛
藤麻さんって、本当に人をのせるのが上手い。彼と一緒ならいつもとは違うことをしてもいいかなって思ってしまう。

ついていったらどうなるのかと、好奇心があることを自覚してしまったわたしは、不安に思いつつも彼と一緒に取引先へと向かった。


『大丈夫、挨拶だけしっかりして、あとは俺の隣で座っていればいいから』と、藤麻さんが明るく笑って言っていた通り、彼の隣でおとなしく話を聞いているだけだった。

わたしの存在、とくに理由があるわけではないが、なんとなく鞄にぶらさがったキーホルダーみたい。

黙っているだけでいいのに、そわそわして仕方なかった。
わたしの考えでは一件付き添ったら会社へ戻るはずだったのに、なぜか藤麻さんはそのあともうひとつ取引先へとわたしを引っ張っていって、彼と一緒に会社へと帰ってきたのは夕方。

藤麻さんが課長に上手く説明していて、『異動したばかりで慣れない取引先への道のりだったんで、友野さんに手伝ってもらいました』と申し訳なさそうに言っていたけど、わたしが手伝ったことなんてなにもなかった。

でも、自分が作成に協力した資料たちがこうして相手に見られているんだなとわかった。

藤麻さんについていってよかったなって、課長に怒られたとしてもきっとそう思うだろう。
< 45 / 151 >

この作品をシェア

pagetop