クールな部長とときめき社内恋愛
藤麻さんが一緒にいてよかった。彼がいれば今の会話も冗談を交えて笑ってくれるだろう。

「元カレに振られたとき、『結婚を意識しはじめたから別れてほしい』って言われたって話をしたのを覚えていますか? そのことがあって、飲み会のときに男の人にわたしと結婚したいか聞いちゃったんです。そうしたらみんなにドン引きされちゃって……馬鹿なことしちゃったなって思っているんですけどね」

これ以上は気を遣ってもらわなくても平気だという気持ちを込めて、平然とした口調で話した。
ガコッと、買った飲み物が降りてくる音は何回目だっけ。

さっきジュースをどれにするか尋ねられたとき、両方なんて冗談を言ってしまったけど、結局藤麻さんはどっちを買ってくれたのかな。

もう一歩自販機に近づいて取り出し口を覗こうとしたら、先にしゃがんだ彼はジュースを取り出して、わたしに差し出した。

両方の手に、りんごジュースとオレンジジュース。

「言われた通りジュースどっちも。でさ、今日この後は友野さんの部屋に着替え取りに行こうかなって考えていたんだけど」

このタイミングで言う?と、わたしがジュースから藤麻さんの顔へ視線を移すと、彼はふっと笑った。

「むしゃくしゃするから俺に付き合ってよ」

それはあなたの台詞ではないでしょう、と思いながらジュースを受け取ってお礼を言ったわたしは、小さく笑って藤麻さんと一緒に会社を出た。
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