クールな部長とときめき社内恋愛
言われるたびにもやもやしていたものを口に出すとすっきりした。

美知に誘ってもらった飲み会だったから彼女に文句は言いづらかったし、山村さんに笑われたときも今日の沢本くんたちの会話も、黙って我慢しているだけだったから。

藤麻さんに話を聞いてもらって胸がすっとしたのは、これで二回目。
お店だったら、気を遣って話せなかったかもしれない。彼はわかっていて、わたしの部屋にお酒を持ち込んだのだろうか。

「友野さんさ、前の男引きずってんの?」

「……まぁ、嫌な思いをしたので。でも、前に進んでいます。簡単に惹かれたりしない、かっこいいって思わない、運命なんて信じない!と、自分に言い聞かせて新しい恋をする予定ですから」

前の恋のように自分の直感を信じてはいけないし、迂闊に恋をしたら絶対に失敗する。
もう惨めな別れの言葉なんて、聞きたくない。

「でもそれって無理しているだけだよな。結局過去の恋愛ばかり頭に浮かんで、なにもできないんだろ」

藤麻さんの言葉にわたしは、缶を口もとへ運ぼうとしていた手を止めた。
言われた通り、そうなのかもしれない。元カレの言葉を忘れられなくて、新しく出会った相手に惹かれるのが怖いと思っている。

恋ってときめいたり、惹かれたりしないとはじまらないのに。それをダメって言い聞かせて、自分の気持ちに向き合わないようにしている。
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