クールな部長とときめき社内恋愛
たしかに楽だけど、どうしよう、ますます彼のことを意識してしまうじゃないか。

「あれ……友野さん、顔真っ赤」

わたしを見下ろしながらいたずらっぽく囁いてきた藤麻さんに、恥ずかしさが込み上げてくる。

「暑いだけです! ……ありがとうございます」

居た堪れない気持ちにさせられても、こうして気遣ってもらったことは素直にお礼を言っておく。すると、藤麻さんはクスッと笑って「今日は素直じゃん」と面白がるように言った。

降りる駅へと着き、まだ体が熱いのを気にしながら会社へと向かう。
そろそろ藤麻さんから若干距離をとろうと、歩道を進みながら考えていたとき、「舞花?」とすぐ横から覗くようにして美知が並んだ。

「おはよう! ……って、えっ!? あれっ……」

「わわわっ、美知、おはよう!」

ほとんど隣にいると言っていい藤麻さんの姿を見た美知が、彼とわたしを交互に見て驚いた顔をしているので、ものすごい勢いで慌てた。

どうしよう、美知に見られた!
そうだ、この前はギリギリ間に合う電車に乗っていたけど、今日はわたしがいつも乗っている時間帯の電車だったから、美知に見つかったんだ。

この状態で彼女にいろいろと聞かれるのは気まずい。
だけど逃れることはできそうにない。
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