クールな部長とときめき社内恋愛
「ふたりとも、一緒に通勤?」

「べ、別にそういうわけじゃ……」

「舞花、なにか誤魔化そうとするとき目を逸らすよね」

じっとわたしを疑る目で見てくる美知に、冷や汗が出てくる。
彼女は勘が鋭いし、嘘は見抜かれてしまうだろう。

上手く誤魔化せそうになくて焦っているわたしを、すぐ近くでクスクスと笑うのが聞こえた。
藤麻さん、わたしはかなり困っているんですよ……!

「やっぱり仲がいいんだね?」

「仲良くないよ、全然」

わたしが首を振って否定をしていると、藤麻さんが会話に入り込む。

「仲良くないとか言われるのは結構悲しいな。だって俺たち……」

「ふ、藤麻さんは黙っていてくださいっ!」

余計に怪しまれるから! 面白がるような彼の視線に対抗していると、美知はニヤニヤし始めた。

「なるほど、そういうことなのね」

「えっ、待って、なに?」

「わかったよ。わたしはお邪魔だと思うので、先に行きます」

「いや、ちょっと、美知! 誤解しないでよ……!」

美知は、全部わかったから、と言いたげな顔をしてこちらに手を振り、わたしたちから離れて先に行ってしまう。
あれはもう、完全になにかを誤解したかもしれない。

まずい、ちゃんと後で否定をしておかないと。

「友野さんの友達、とても気が利くんだな」

「なに言ってるんですか! 藤麻さんが余計なことを言うから、絶対変な誤解されましたよ!」

慌てているのはわたしだけで、藤麻さんは余裕のある笑みを浮かべている。
こうして歩いている間も、誰かがわたしたちを見かけるかもしれないのに、彼のことを見ていると離れづらくなる。

自分の気持ちなのに混乱しているわたしは結局、彼の少し前を歩くだけの距離で会社へ向かった。
< 55 / 151 >

この作品をシェア

pagetop