クールな部長とときめき社内恋愛
もう嫌だ、この人たちから離れたい……!
そう思ったとき、後ろから肩に腕が回ってグイッと横に引っ張られた。

「なにしてんの?」

わたしの体を引き寄せた相手は、藤麻さんだった。
じろっと沢本くんたちを睨んでいて、彼らは苦笑いのようなものをしながら「行こうか」と声を出し、去っていく。

「ど、どうしたんですか、藤麻さん」

「……ああ、まだファイル残ってたから」

そう言って、わたしの肩を抱くようにしているのとは反対の手を動かし、ファイルを見せてきた。わざわざ持ってきてくれたんだ。
「俺も一緒に持って行くよ」と言ってくれた藤麻さんと、通路を歩きだして資料室へと向かう。

「ありがとうございます」

「いや、いいけど。それより、あの男たちいい加減にしてほしいな」

「はい……でも、わたしが変な発言したのが馬鹿だったし……」

みんな早く忘れてくれるといいのに。あのときは、恋に慎重になるんだっていう気持ちが空回りしていたんだと思う。

「沢本くん、だっけ。どうしてあんな男に“結婚したいと思う?”なんて聞いたんだよ。ちょっとでも気になったから?」

資料室に着いて中に入り、ふたりきりでファイルを片付け終わると、藤麻さんが薄く笑ってからかうような声色で尋ねてきた。
そう、沢本くんたちと飲み会をしたとき、わたしは少しだけ沢本くんのことをいいなと思った。
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