クールな部長とときめき社内恋愛
だから馬鹿な質問をしてしまって……。今はもう、沢本くんのことはいいなんてまったく思わないけど。
それでもあのとき気になっていたのは事実。自分の情けなさも交じって居た堪れない気持ちになったわたしは、藤麻さんから顔を逸らした。

昨日散々彼に話して聞いてもらったけど、それはお酒が入っていたからだ。今は恥ずかしくて、できればこの話は終わりにしてもらいたい。

そう思っていた次の瞬間、藤麻さんが近づいてきて腕を掴むと、わたしの体を壁へと押しつけた。

えっ……なに?
わたしをじっと見下ろす彼の表情がなにかを言いたげで、言葉を我慢するように顎を軽く引いた後、目を細めて顔を近づけてくる。

「俺だったら、結婚したいと思うか聞く友野さんの不安な気持ち、わかってあげられるのに」

ゆったりと誘うような声がとても色っぽい。昨日のじれったい指先を思い出し、彼の瞳に捕まったまま動けなくなった。

「目が潤んでるけど、それは嫌だから? それとも、期待してくれてる?」

「そ、んな……」

魅惑的な視線に苦しいくらい胸の鼓動が速くなっていって、どうしよう、体が熱くなってくる。

「資料室でふたりきりになってこういう展開があったら、男のほうも結構盛り上がるかもな」

パッと手を離した藤麻さんは、いたずらっぽく笑う。
……はい? なに、今の。ただの冗談だったの?

真っ赤になりながら唖然としているわたしに、「やばい、昼飯の時間なくなる」と、藤麻さんは陽気に言いながらドアの方へ向かう。
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