クールな部長とときめき社内恋愛
そういえば、スマートフォンが震える音で目覚めたような気がする。
慌ててベッドの枕元まで行って確認すると、確かに藤麻さんから《風邪、大丈夫? 見舞いに行くよ。もうすぐ着くから》というメッセージが入っていた。

焦りながらもとりあえず、マンションのエントランスにいる藤麻さんを中へ通して、わたしは先ほど脱いだシャツを急いで片付けた。そして、彼が部屋に来るのを待つ。

少ししてやってきた藤麻さんは、コンビニでゼリーを買ってきてくれたようで、冷蔵庫の中にしまってくれた。
ありがとうございます、とお礼を言うと彼は優しく微笑んでキッチンからリビングへとやってきた。

「それで、風邪は大丈夫?」

「は、はい。さっき測ったら微熱になっていたので、明日の朝には治っていると思います」

「そうか。あまり無理はしないように」

小さく口もとを緩めた彼に、ソファに座るわたしはゆっくりとうなずく。
まさか、藤麻さんが来るとは思わなかった。わたしを心配してくれたのだろうか。

先週の飲み会の帰りに不自然な態度をとってしまったこともあって、なんとなく気まずい感じがある。休憩スペースで並田さんの肩に手を置いていたことも気になるし……。

思い出したら胸がきゅっとなって、わたしはうつむいた。
せっかく来てくれたのだから、もっと明るく「大丈夫です」と話をしたいのに。藤麻さんに対してのもやもやした感情が邪魔をする。
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