遠い昔からの物語

大胆だが育ちの良さを感じさせる薫子とはすっかり打ち解けた。

温泉の湯でつるつるの肌になったわたしたちは、間宮中尉の部屋へ戻ってきた。

(ふすま)が開いて、神谷中尉が出てきた。

「おっ、ほっぺた桃色に染めて、えらい別嬪(べっぴん)さんになって帰って来たのう」

わたしの頬がさらに赤く染まる。

「もう、余計なこと言わないでちょうだい」

薫子が彼の腕をぐいっと引っ張る。

「……ほんなら、明日、楽しみにしとうで」

神谷中尉は部屋の方へ振り向いて右手を上げた。

「貴様は、いつも余計なことを云う……じゃあな」

部屋の中から間宮中尉の声が聞こえてきた。

神谷中尉は大きな笑い声と共に、薫子に腕を引っ張られて自分の部屋へ戻って行った。

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