遠い昔からの物語

部屋は電燈を消されて、一瞬のうちに真っ暗になった。

寝巻きに着替えた間宮中尉が蚊帳(かや)の中に入ってくる。

わたしは中尉に背を向けて横たわっていた。

生まれて初めて一人きりで長い間汽車に乗って、全然知らないところへ来て、全身はくたくたに疲れているはずなのに、目は異様に冴えている。

やけに蒸し蒸しする、暑い夜だった。

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